ガイラ飛行隊長・衝撃のコズミック・インタビュー!
歴史を揺るがす気宇広大なる企画の数々を聞く
「つまりね、モンゴロイドなんだ、俺ら」

 


小水〈ガイラ〉一男 
略歴
 46年、宮城県生まれ。日本大学芸術学部中退。66年、若松プロダクションに参加。助監督として若松孝二、足立正生、沖島勲、大和屋竺監督の計20本でチーフをつとめたほか、「出口出」名義で若松孝二監督『現代好色伝 テロルの季節』、『ゆけゆけ二度目の処女』(69)(足立正生との共作)などの脚本作品がある。また、足立正生『性遊技』(68)、若松孝二『性賊 セックス・ジャック』(70)などでは、役者としても怪演。70年、若松プロ『私を犯して』で監督デビュー。その後、写真家・長濱治のオフィスでCMフォトなどを手掛け、一時、映画界を離れる。80年、国映製作『ラビットセックス・女子学生集団暴行事件』で映画界に復帰。 86年、にっかつロマンX「スプラッター・エロス」シリーズで、血まみれ、特撮駆使、性描写エスカレートの刺激過剰作品『処女のはらわた』『美女のはらわた』を連作する。90年、ビートたけしプロデュース・主演による『ほしをつぐもの』で一般映画初監督。他、主な脚本作品に、小沼勝監督『妻たちの性体験・夫の目の前で、今...』(80)、『箱の中の女・処女いけにえ』(85)、上垣保朗『陵辱めす市場・監禁』(86)、川崎善広『瓶詰め心臓』(86)など。またOV作品に、宮崎ますみ主演『XX(ダブルエックス)・美しき凶器』(94)などがある。
(キネマ旬報社『日本映画人名事典?監督篇』より)



 
聞き手:高橋洋、新谷尚之、小寺学、渋谷哲也   
写真:新谷尚之


■『ソドム』を観て

ガイラ あの机の抽き出しに挟んだチンチンは本物?
高橋 いえいえいえ(笑)。
新谷 あ、ガイラさんは『ソドムの市』、もうご覧になったんですか?
ガイラ 観たよ(笑)。
新谷 なんか、「ウンザリした」って顔してません?(笑)
ガイラ そんなことないよ(笑)。
高橋 じゃあ、まあ、感想からお伺いします...どうでした?
ガイラ あれって(上映時間は)1時間何分だっけ?
高橋 104分です。
ガイラ 104分か...85回ぐらい「バカ!」っていいながら観たよ(笑)。
高橋 たははっ(笑)。
ガイラ でもどうだったの、初日は?
高橋 (きのうの)初日はおかげさんで立ち見の満員盛況でありました。
ガイラ あのさ、鳩とかさ、×××の釣り糸の見えてたりするとことか、お客さん笑ってた?
高橋 僕もきのうは、後半から(場内に)いたんですけど、釣り糸見えてるとこっていうか...いや、なんだか知らないんですけど、×××の離陸シーンで笑いが起きたんですよ。それが釣り糸が見えたから笑ったのかどうかはわからないけど...でもね、なかにちょっとムカッとくる笑いはあったかな(笑)。
ガイラ あれを面白がるか、ネタばらしだって思うか、どっちかなんだよな。
小寺 あのう、僕が観た限りでは、けっこうその前のクルマの「ウィ?ン」って、あの火炎放射器の(砲座が回転する)やつとか、ああいうの観てもう(失笑が)...。
新谷 あのウィ?ンっていうソドム車の大砲のところで「チャチい!」とかね。
ガイラ あのチャチさが面白いんだよなあ。
新谷 いや?(スタッフは)必死でやってるんですよ。前半はわりかしそういうところで「いかにもこれはギャグだな」って感じでずっと笑いを取ってたんですけど、後半になったらそうでもなかったですけどね。ここってとこは笑いが出るだろうとは思ってたけど、もうみんな納得して観てくれてるっていう雰囲気は出てきましたよ。
高橋 渋谷さんの鳩のとこはどうだったんですか?
新谷 あそこは普通に笑いが出た程度で、もうみんな慣れてきたっていうか。
高橋 中身を自分の指で動かしてるっていうのは、もうわりとみんなスッと受け入れてくれてました?
新谷 いやもうあきらめてました(笑)。
小寺 あれ、あの首の動きより新谷さんの「クルックー」っていう鳴き声にウケてたような気がするんですけど(笑)。


■『XX(ダブルエックス)美しき凶器』

高橋 で、きのうは中原翔子さんとも舞台挨拶したんですけど、中原さんて「Vシネ評論家」なんですね。「Vシネコラムニスト」。
ガイラ あ、そうなの?
高橋 とにかくVシネならたいがい観ていて詳しいんですけど、「Vシネに目覚めたキッカケは『XX(ダブルエックス)美しき凶器』(93年)だ」っていうんですよ。ガイラさんの(シリーズ)第一作目。
ガイラ へえー。
高橋 それまではVシネっていうものは、どうにもよくわかんなかったらしいんですけど、仕事が来て「どうしようかな」って思ってるときに、Vシネってなんだろうか知ろうと思って、何本か借りて観て。で、『XX(ダブルエックス)』に出会って、それがバツグンに面白くって「あ、この枠組みっていうのは可能性があるんだ」って気づいて、のめり込んだんですって。
ガイラ ほぉ?。
高橋 でも僕もそうだったですね、考えてみたら。Vシネが始まったばっかりの頃はよくわかんなかったですね。まあでも、初期の頃って、実は億単位のカネかけてたんですけどね。崔洋一の『襲撃?BURNING DOG』(91年)とか、えらいカネかけて作ってたんですけど。僕もでも、90年入ってからの『XX(ダブルエックス)』を観て、なんか知らないけどやたら面白かったです。あれがいったいなんで面白かったんだろうってのは不思議なんですけど。
ガイラ あの作品を劇場公開するってんで、ずいぶん会社とモメたんだよ。
高橋 えっ、そうなんですか?
ガイラ 俺はずっと反対したのよ。要するにアレ、「Vシネだ」っていう約束で作ったんだから「フィルムにはしたくない」っていったんだけど、「社の方針だから、宣伝もかねてレイトショーだけでもやることになりました」って。それで、Vシネだからスタンダードサイズで撮ってるじゃん。やっぱりちがうんだよな、映像表現とか効果がね。
小寺 制作費もかなりかかってますよね。
ガイラ うん、けっこうかかってんじゃない。
高橋 あの頃だと5千万くらいですか?
ガイラ いやもっとかかってんじゃないのかな、6、7千万いってんじゃないのかな、たぶん。
新谷 高橋さんはその次のやつを(脚本)やったんでしょ?
高橋 小沼勝さんのやつですね(『XX(ダブルエックス)?美しき狩人(ハンター)』(94年))。
ガイラ 小沼さんで『XX(ダブルエックス)』やったの?
高橋 そうです。だから...「2」ですよね。あのときの脚本は、ほんとにもう、ボロボロの状態で、えらいことになったんですけど(笑)。
新谷 あれは(制作費)いくらだったんですか?
高橋 いやだから、あの時に5、6千万だって記憶してたんですよね。
新谷 じゃあ、もうすこしあったのかも知れませんね、ガイラさんのときは。
ガイラ いや、どっちみち女優さんのギャラでしょう、高いのは。
小寺 やっぱり宮崎ますみっていうのは、当時のネームバリューがすごいじゃないですか。
高橋 だから、あの人を脱がせたプロデューサーの人がいて、その人がものすごい...『XX(ダブルエックス)』を切り開いたのがその人って。
ガイラ 松田さん。
高橋 そうですね、松田仁さん。あの人が、いかに自分がくどいたかを東映社内で自慢して歩いてたっていう(笑)。でも、なんかあれを観たときに、画のひとつひとつがやたらと面白いんですよ。
ガイラ ははっ、そうだった?
高橋 ええ、「これはいったいなんだろう?」って。ま、当時としては低予算なんですよね。いま考えたら、Vシネで5、6千万っていったら、すごい贅沢な条件ですけど、当時としては「すごいタイトな条件のなかでやってるんだよなあ」っていうのがあって。昔のハリウッドのB級っていわれてた、本当にお金が無いなかでギリギリのとこで撮ったがゆえに出来ちゃった表現...っていうのを蓮實(重彦)さんなんかから教えられて観て...『拳銃魔』(ジョゼフ・H・リュイス監督・49年)とかですけどね。だから40年代、50年代のB級映画ですけどね。で、そういうのを観て「おっ!」と驚いて、「これは可能性あるぞ!」って思ってたようなことが「Vシネマ」って形で現れたんだってことがわかったのが『XX(ダブルエックス)』の一本目だったんですね。
ガイラ いや、俺はなんせ夜仕事すんの嫌だから。だから暗視カメラなんてさ、あれデイシーンで撮りゃいいんだから。ノクタビジョン(暗視鏡)とか使うシーンがあんじゃん。ナイトシーンなんだけど昼間に撮って。暗視だから要するに明るく緑に見えるわけじゃん。
新谷 要は、夜は飲んでるから(笑)。
ガイラ 早く飲みたいから(笑)。
高橋 あれ何日ぐらいだったんですか、撮影日数?
ガイラ あれで...いや、あれでも十日ぐらいじゃない、せいぜい。
高橋 そうですか、じゃあその後とそんな変わんないですね。
ガイラ あのメクラの女の部屋っていうのは、日活にセット組んだやつだから。
高橋 ああ、当時はまだ日活でセットを組めたんですよね。
ガイラ 日活で火事出したのって何年前だっけ?
新谷 僕と小寺さんがいっしょに飲んでた時にウチの妹が「火事があったよ、日活で」って教えてくれて。ですから、あれ大和屋(竺)さんが亡くなられる頃ですよ。
ガイラ そんな昔だっけ?
新谷 そうです。そのときに確か小寺さんがウチに遊びにきたんですよ。岡山ですけど。だからもう十年以上前ですね。
ガイラ 大和屋さんってお亡くなりになって十三年なの? いま。
新谷 十...三年に...なりますかね。(※じっさいは十一年)早いですね。
高橋 ああ、そうか。じゃあ、火事が出たあとですか。
ガイラ そうなるね。
高橋 あそこのステージはずっと黒い煤けたままですごかった。物置きになってました。
ガイラ それから日活は、スタジオ内で火気厳禁になったんだよ。


■大和屋さんのこと

小寺 ガイラさんが助監督やられたなかで、いちばん印象強い人(監督)ってやっぱり大和屋さんですか。
ガイラ 大和屋さん...大和屋さんだよな。足立(正生)さんも助監督何本かやってんだけど、足立さんは、いってる(ことの)方が映画よりインパクト強かったんだよ。要はヘタだったんだな、映画が。俺はそこだけ似ちまった(笑)。大和屋さんは...俺はだから、若松プロはね、大和屋さんが...あの、えーっと何だったっけ? 戦場カメラマンの話。
高橋 『裏切りの季節』(66年)。
ガイラ ああ、『裏切りの季節』だったっけ。『裏切りの季節』を撮り終わってからだからな、俺が若松プロに入ったのは。それで麿(赤児)さんとか、吉沢健とかなんかが殺し屋やってたやつあったじゃん。
高橋 ああ、『毛の生えた拳銃』(68年)。
ガイラ うん。『毛の生えた拳銃』が初めてかな、俺。
高橋 じゃあ『荒野のダッチワイフ』(67年)は付かれてないんですね。
ガイラ ぜんぜん。
小寺 それで、例の荒戸(源次郎)さん(製作)のアレになるわけですか?
ガイラ うん。あのときは俺は「撮影オペレータ」っていう名目だったの。
高橋 アレっていうのは『愛欲の罠』(73年)ですね。
ガイラ うん。要は(『愛欲の罠』の撮影を担当した人物は、本来)スチールカメラマンなんだよ。だから「キャメラマンの横に付いていろいろアドバイスして」っていわれて。それで、いちおう計測と、カメラアングルとかなんかこっちがセッティングするんだけど、あの人ね、なんか遠視なのよ。
高橋 あ、有名な写真家の方ですね。
ガイラ 毎朝、現場来るとき酒臭いのよ(笑)。で、俺らは、ほら、要するにフォーカス合わすときにすりガラスのマット面で視度を決めて、それで覗いて、ぜんぶピントも合わせて「どうぞ」って覗かせると、本人は眼鏡を外すじゃない。だけどピントが来てないから、自分の視度に勝手に直しちゃうわけよ。で、自分(の眼に)は来てんだけど、フィルムには要するに奥ピン(※背景にピントが合う状態)になってる。それを気がつかないで、ラッシュ観るたびにずっと奥ピンなのよ。で、俺と撮影助手で「なんでだろうなあ?」って機材を二回替えて。そしたら荒戸が「いや、これはガイラの責任だからね」っていうわけよ。「おかしいなあ」と思ってたら、劇中用で「次のターゲットはコイツだ」っていう写真を写さないといけないんだよ。それで...あの人、名前なんていったっけな?
高橋 えーっとね、あ、朝倉(俊博)さん。
ガイラ そうそう、朝倉さん。「じゃあ、朝倉さん、ちょっと劇用の写真が必要なので撮ってください」ってカメラ渡して現像したら、奥ピンなのよ。
小寺 そこでわかったんですね、原因が。
ガイラ うん。空気銃持った殺し屋がいて、後ろに障子の桟(さん)が写ってんだけど、障子の桟にピントが来てんの。「朝倉さんって遠視じゃないの?」っていったら、初め口ごもってたんだけどバレてさ。それでそれまでのやつはぜんぶリテイクしたんだから。大変な撮影だったよ。
高橋 でも考えてみたら、なんでカメラマンなのに、ピンが合わなくなるんですかね。
ガイラ たぶん自分のスチールカメラとかは、ファインダーに視度矯正が入ってんだと思うよ。自分の視力に合わせてレンズ付ければいいだけの話だから。だから最初にいってくれればね、その人の視力でフォーカスが取れるんだけど、そこまでは気がつかなかったもんね。あとは、ほら、撮影がやりやすいようにって、天象儀館(※荒戸源次郎が主宰した劇団)は国立かあっちの方の...いわゆる昔の進駐軍の将校ハウスみたいなとこに共同生活してたんだよね。その近所で撮ったもんだから、(田中)陽造さんが観終わったあとに「俺はこんな田舎の映画なんて書いてねえよ!」って(笑)。まあ、みんなで初号が終わって打ち上げのとき「あのキャメラマン、フクロにしようぜ!」なんていってさ。もう大和屋さんなんか、間に入ってかわいそう(笑)。


■『レインボーマン』の現場に
新谷 ガイラさんは、その頃、若松孝二さんのところで監督はされてないんですか。
ガイラ いや、だから...アレっていつの頃だっけ?
高橋 『私を犯して』(国映=若松プロ)が70年ってなってますよ。
ガイラ 70年? 俺が23歳のときだな。
一同 ほぉ?、若い!
ガイラ そうそう、そのあと80年の『ラビットセックス・女子学生集団暴行事件』までの間、俺やってないの、映画は。写真の方にいってたから。
高橋 そのときに「レインボーマン」のスチールの仕事もされてたってことなんですけど(笑)。それって「レインボーマン」の現場にいたわけなんですか?
ガイラ うん。「この日とこの日はここでこういう撮影があるから、キャラクター撮ってきてくれ」って。それが筆箱になったり、運動靴になったり、自転車になったりするんですよ。
高橋 じゃあ、基本的には、あのレインボーマンの七変化を撮ってたんですか。
ガイラ そうそう(笑)。
高橋 まあ、商品になるのはそれぐらいでしょうけど...あのう、だから〈死ね死ね団〉はたぶん撮ってないですよね?(笑)
ガイラ 〈死ね死ね団〉は撮ったのかなあ...いや、撮ってるよな。
高橋 平田昭彦(ミスターK)とか‥‥。
ガイラ 撮ってるよ、うん。
一同 おお?っ!
ガイラ そうそう「アノクタラサンミャクサンボダイ」だけは覚えてんだよ(笑)。
新谷 なんでしたっけ、あの殺し屋は。イグアナでしたっけ?(笑)
高橋 魔女イグアナって...あれなんだっけ、有名な声優さんですよね...曽我町子さん。
新谷 曽我町子さんでしたっけ? 魔女イグアナはね...塩沢ときさんでしょ。
高橋 ちがうちがう、順番が逆。イグアナとゴッドイグアナと二人いるんですよ。で、どっちかが母で、どっちかが娘なんですよ(笑)。
新谷 すごいなあ(笑)。じゃあ、ゴッドが塩沢さんかな。(※これは、高橋さんの記憶違い。イグアナが塩沢ときで、ゴッドイグアナが曽我町子)
高橋 あとね、あのときに、オルガっていうミスターKの片腕みたいな女幹部がいて、それを演じた女優さんが、当時けっこう評判になってて、キックボクシングをやってる人だったんですよね。
新谷 その女優さんは誰ですか?
高橋 その女優さんはキックボクシング習ってて、それでストーカーみたいな男がマンションに入り込んできたのをキックボクシングで倒したっていうのが、当時すごいなあって思って。(※藤山律子さんです)
ガイラ すごいなあ。すごい快感だったろうなあ!(笑)
新谷 倒された方がでしょ(笑)。その「レインボーマン」関係で、そういう仕事には発展しなかったんですか。「なにか脚本書いてくれ」とか。
ガイラ いやあ、ぜんぜん。
高橋 当時そういう子供向けの番組って、スチールの仕事がけっこうあったんですか。
ガイラ いや、それはね、広告代理店に縁故があって、偶然ですよ。だから、なんつうの、頭の先から足の先までちゃんとフレームに入れなきゃいけないじゃん。つまんないっちゃあ、つまんない仕事なんだよな。
高橋 とりあえず、その被写体にしてる「レインボーマン」の世界そのものには、なんの興味もないわけですね。
ガイラ なんの興味もない(笑)。
高橋 そりゃ、そうですよね。
新谷 高橋さん、その筆箱とか持ってます?
高橋 いや、僕は...だって中学生だったんだよ、俺!(笑)キャラクターグッズを買うっていうノリじゃなかったんだけど、ただ、あまりにも番組が面白かったので、夢中で観てましたね。

 


■『ほしをつぐもの』
新谷 ガイラさんは賞を取ったってことはないんですか、いままで映画で?
ガイラ 脚本賞は取ったことあるよ、熊本映画祭で。あのう、若松さんのやつ...なんだったけ? 石坂啓っていうマンガ家の原作。
新谷 ああ、『キスより簡単』(監督:若松孝二・89年)!
ガイラ あ、そうだそうだ。あれ脚本はよかったんだけどな(笑)。
新谷 ガイラさんもちゃんと普通の脚本を書かれてるじゃないですか。
ガイラ 普通って...わかんないなあ、なにが普通かって。
高橋 あれは...確かアイドルが出てたんですよね。
ガイラ 早瀬優香子だかなんとかっていうんじゃなかったかな。あの年頃の監督さんてさ、勝手に改ざんするんだよな。だから俺、(原田)芳雄さんが「放浪の旅に出てアラブの砂漠を歩く」なんて書いてねえんだもん(笑)。すぐそうなっちゃうんだから、あの方は。
高橋 あれ、たしか画面にフキダシが入りましたよね。
ガイラ 入った入った。
高橋 あれは脚本にあるんですか。
ガイラ ホンに入れたの。
高橋 いま思い出した(笑)。そういえば、『ほしをつぐもの』(90年)も頭のほうで字幕が入るじゃないですか。
ガイラ あれは、ほら、ガラスの向こうのベランダで話してて、声が聞こえないっていう。
高橋 え、でも、字幕ですよね。わざとそうしたんですよね。
ガイラ わざとですよ。
高橋 そういうの好きなんですか? 画面に字が乗ってしまうっていうのが。
ガイラ あれは、ほら、間違って「外国映画観てんじゃないか?」って思わせようと思って(笑)。
高橋 はあ?。
ガイラ ハリウッドがなかなか呼びにこないからサ(笑)。
高橋 でもあれ最後、田中邦衛がけっきょく後遺症で言語障害になっちゃってて「やっぱり米がいい」って、なにいってるか判らないから、そこでも字幕が出る。
ガイラ 「やっぱり米が好き」ってやつね。邦衛さんに聞かれて「これどういう意味?」って。「いや、アジア人だっていう意識でいいんじゃないですか」っていったら頭抱えちゃってさ(笑)。(※『ほしをつぐもの』は、上司からリストラを告げられた中年男(田中邦衛)が突然昏睡状態に陥り、生死をさまようなかで、子供の頃、戦時中の疎開先から脱走し不思議な山男(ビートたけし)に助けられた記憶を甦らせる...というガイラさんならではのハートフル・ファンタジー)
高橋 いや、今日聞きたいことの主はガイラさんの今後の企画の話なんですけど、いちおう作品のこともおさらいしとこうかなって思って。で、『ほしをつぐもの』って、今日のために久々に観たんですけど...そうしたら×××が出てくるんで、「あれ?」って(笑)。あ、でもこれはネタばらしになっちゃうから。あのう、えーっと、子供たちが荒川を筏で降りてくるところで、米軍の戦闘機に遭遇しちゃうじゃないですか、あれもいってみれば、すごい特撮ですよね。キャメラ前に戦闘機の機体を組んで、奥に荒川を流れる筏があって。
ガイラ そうだね。それで、一瞬ね、あの飛行機が止まるんですよ、子供たちを確認するために。ブーンと来て、パッと止まって、またパーッといく。そんなのアリかいなって、自動車じゃあるまいし(笑)。
高橋 あれは「止まった」ってことだったんですか。
ガイラ そうそう。「おっ、子供がいる!」っつうんで。
高橋 そうかあ。あのあたりの特撮精神が、似てるといえば似てるかなと(笑)。
小寺 そういえば、ガイラさんは昔、ビートたけしさんとお店のアルバイトやってたんですよね。
ガイラ ちがうちがう、俺がバイトやってたところのお客だったの、タケちゃんが。 で、その系列の、もう一軒あるジャズバー(〈ビレッジバンガード〉)でバイトして たの、タケちゃんが。そこは早番、遅番がローテが組んであって、タケちゃんとロー テを組んでたのが永山則夫なの。 
小寺 たけし、ガイラ、永山則夫って、すごい三人じゃないですか。それが同時期にいたっていう(笑)。でもやっぱり『ほしをつぐもの』っていうのはそういうのがあったから(出来た)っていう部分もあったんでしょ?
ガイラ いや、どうかなあ。
高橋 『ほしをつぐもの』っていうのは、ビートたけしから話がきたんですか?
ガイラ うん。要はずいぶん会ってなかったんだよ、新宿時代から。で、「小水はまだ映画撮ってんのか?」っていうふうな話になって、「やってるみたいだよ」って共通の友だちがいったから、「じゃあ連れてこいよ」っていうんで行ったの。行く時に手みやげが必要だろうと思って、企画を二つ考えてもっていったのね。一つは「タイで旧日本軍が隠した財宝を探す」っていう話で(笑)。そうしたら「オイラは飛行機はダメだよ」「ジャングルなんかヤだよ。虫が落ちてくっから」とかっつうんで、「じゃあ国内のやつね」っていってあの話にしたの。
新谷 国内でも同じじゃないですか(笑)。
ガイラ 「やっぱりオマエ、森ん中連れて行くんだろ、コノヤロー!」とかなんとかいわれて(笑)。「ヤなんだからな、こういうとこは!」って。
小寺 制作費の話もありますね。
ガイラ そう、制作費の話になって「いくら要るんだ?」っていわれたから、俺「う?ん」っていったら、むこうから「4億か?」っていわれたの。でも俺、4億っていう途方もないお金は思ってもみないし、つい口がすべって「3億でいい」っていってしまったの。「もうひと声!」っていやあよかったなあ。そしたら家が建ってたよ(笑)。
小寺 (制作費で)建てちゃいけないでしょう(笑)。
ガイラ いや「映画に使うんだよ!」って(笑)。「せっかく新築の家を作ったんだけど、親父が倒れたっつうところから始めっから」ってすればいいんだろ。
小寺 でもなぜか「4億か?」って聞かれたときに「3億」っていってしまったその言葉がね...。
ガイラ 本当に情けない(笑)。


■小谷実可子が泳ぐだよ!

高橋 噂でなんか新作の予定があるって...。
ガイラ いや、ないですよ、別に。
小寺 でも、アイデアは豊富にいろいろとあるんですよね。
ガイラ そりゃアイデアはいっぱいあるけど、なかなか台本を読んでくんないから。
高橋 こないだ伺ったときに、聞いたんですよね、そのガイラさんの企画の話を。新谷さんが漫画にしたらって。それが、だから「アダムスキー型の円盤から話が始まる」っていう。
ガイラ あ、それは、だから二つあるのよ。一つは、いわゆる今の、だいたい十代後半ぐらいの子供たちの脳がイカれてきてて...要するに、自分の脳が自分の肉体を抑制できなくなってくるのね。〈ネオテニー〉ってあるじゃん、〈幼態熟成〉って。ウーパールーパーといっしょで。ウーパールーパーって...両生類って親になると鰓(えら)が中にひっこむんだけど、あいつはここに鰓が出たまんまで、いい環境だからそのままで来ちゃってる。で、身体は子供だけど、要するに生活能力は大人なんだわ。で、いまの子供たちもそういうところがあるから、なんかそういう子供たちが、こう「他者を生贄にして自殺する」っていう願望癖がどんどん伝染していくのね。で、最終的にはわりと知能指数の高いそういう子供たちが集団で浜岡の原発からプルトニウムを盗んできて、東京に向かって、風向きのよいところで、東京都民を生贄に自分たちも死んじゃうんだっていう。でも、途中でバレて、原発の前で機動隊がバリケードを張ってて、全員射殺。で、生き残るのが...二人生き残るんだけど、壁抜けできる子と、それと〈単為生殖〉っつって男性精子を必要としないで子供を作るのがあるのよ。で、それで自分の子供を作っちゃう...それがおなかにいる17歳の女の子とこの二人だけ生き残って。その男の子と女の子を、それに関わってきた少年犯罪のゴーストライターをしてた元高校の先生だったやつが保護して、山の奥でみんなで幸せに暮らしましたとさ、っていう(笑)。
一同 ほぉ?。
新谷 素晴らしい!
高橋 で、タイトルは?
ガイラ タイトルはね...えーっと、『ベクター』。〈ベクター〉って、いわゆる脳のなかで意識を運ぶ役目をする物質。それはもう、十年以上前から毎年書き直してる。ハリウッドが来ないかなあって。要はその(自殺願望の)原因っていうのがね、物質文明なのはわかってんだよ。原因は「捨てる」って行為なの。モノを捨てると、じっさい目の前から物体は消えるんだけど、意識は残るのよ。この意識っていうのは、脳のなかでも消化しきれないぐらい、ものすごくちいちゃな、ナノよりもちいちゃい物質だから、汗とかなんかでも抜けないの。それが前頭葉に重力場を作って、こうギリギリとたえず欲求不満を作り出すわけ。大量消費のおかげ。で、そういう子供たちが、自分の頭のなかに強力な重力場をもってて、それが扁桃核(へんとうかく)と海馬(かいば)を刺激して、ものすごい極端な欲求不満がドンドンふくれていって、「その臨界点がもうすぐ来ますよ」っていう。それでも人間として生きていけるのか...それが本当に人間なのかどうかちょっとわかんないけどね、なんかそういう話をしたいなと。
高橋 ははあ。
ガイラ で、もうひとつは『グランド』、「壮大」っていうタイトル。「そうだい」でも早稲田じゃないんだよ(笑)。
高橋 はい(笑)。
ガイラ これはいちばん最初に思ったのは、小谷実可子さんっていうシンクロのきれいなお姉さんがいたじゃん? あの人が引退するっていうときに、俺、あの人が好きだったから、あの人を主役にして映画作りたいなって思って(笑)。ハワイ大学の海洋生物学のお勉強をしてる女の子がいて、父と母は事故でもう亡くなってて、ジイちゃんとバアちゃんに育てられてて、そのジイさまが死んだっていうんで、日本に帰ってくると。するとそのジイさまが財団をこさえてくれてるのよ、その女の子のために。で、古来からの日本の精神を世界中に行って拾い集めてきなさいと、そのためにこの財団を作ってあるから「おまえがこれを運営しろ!」っていわれて。
高橋 えっ、日本の精神? 「精神」って?
ガイラ いわゆる、あの...なんていうんだろ、神武天皇以前の、古来から日本にあった精神文化ってのがあって、いわゆる裏歴史によると、その頃の日本の天皇っていうのは、なんたっけ? 天の浮き舟? 要するに石で作った舟で空を飛んであっちこっちを巡回していたっていう。
高橋 ああ、はいはい。なんだっけ...〈富士文献〉とか。
ガイラ うん、富士文書だとか、茨城だかあっちのほうにあって戦時中に潰された宗教とか...亀岡の大本教(おおもときょう)とか、あのへんの根本にあるような話なんだけど。
高橋 そうですね。
ガイラ そいで、日本から黒潮に乗って...あの昔、角川(映画)でさ、ミクロネシアのほうに藁の船で行く映画があったじゃん。
高橋 ありましたね。(※『野生号の航海?翔べ怪鳥モアのように』(78年))
ガイラ あれと同じ方法で黒潮に乗って、風の力で海を渡るんですよ。で、行ったところがイースター島で。イースター島のモアイ像のうしろにモアイ語っていう文字が彫ってあるのね。それはたぶん古代の日本語で解けるはずなの。俺は解けないけど。要するに豊国文字とか阿比留草(アヒルクサ)文字とか、いわゆる〈神代文字〉っていうのがあったのね。そういう文字を駆使するとインディアンの古代の文字も読める。で、そこでイースター島のモアイのうしろを読んでたら、実は「紀州の方から日本人がちゃんとそこに来てます」っていう。で、今度イースター島からまた海を渡っていくとペルーに着くの。で、ペルーの方にいくと「神はむこうから来た」っていう神話が残ってる。あと、〈ケツァルコアトル〉っていう顔がヘビで身体が鳥の神様とかのお話も交えて。で、アンデスを超えてアマゾンに入っていくと、アマゾンにね...いくつか、三つか四つはもう発見されてんだけど、七つの地下帝国っていうのがあって。
高橋 地下ですか?
ガイラ うん。そのなかの一つに空飛ぶ円盤があるの。要するに縄文よりももっと太古の時代にちゃんとむこうから飛来してたっていう物的証拠がそこにあって、それを奪い合って、いろいろドンパチとかなんかがあるんだけど、最終的にはその女の子の財団がUFOを獲得して。そこから今度は化石燃料を使わない、ぜんぜん新しい次元の人間の文化が始まっていくのである、っていう。
新谷 小谷実可子で? やっぱりシンクロのシーンはあるんですか?
ガイラ ないんじゃない(笑)...いや、あるある! あるんです。あそこでやるんですよ。あっちでいうところの...地下の井戸があるじゃん。それが、夜中さ、地下にボコンと穴が開いてて、そっから15メートルくらい下にきれいな水がたまってるんだわ。そこに月明かりがポーッて当たって。そこでね、やおら脱ぎ出してね。全裸で泳ぐだよ!
一同 泳ぐだよ!(笑)
ガイラ それだけが見たいんだ、俺は!(笑)


■ガイラさんは渡来人?

高橋 でも伺ってると、あれですよね、80年初頭くらいにあった『迷宮』(白馬書房)とか『地球ロマン』(絃映社)でしたっけ? 『ムー』(学研)の前身になってる武田崇元(たけだすうげん)っていう人が主宰していたディープオカルト雑誌があったんですよ。
ガイラ あ、そうなの?
高橋 その後、武田崇元は『ムー』の創刊の陰のプロデューサーみたいなことをやって、その後、八幡書店って作って。その富士文献とか、あとなんでしたっけ...つがる...。
ガイラ ああ、〈東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)〉とか。
高橋 それそれ。いわゆる偽史文献と呼ばれてるものを世の中に散布しようとしてる人らしいんですけど、でも、それって、戦前...それこそさっき話された大本教とか、戦前からあった偽史運動ですよね。なんか「日本がいかにすごいか」ってことをやってると、天皇以前の歴史に戻って、神代文字とかまで行っちゃって、まあ、ムー帝国は実は日本だとか(笑)。で、研究書読んでるとね、東宝のいわゆる怪獣映画とか『海底軍艦』とかって、なぜか戦前のそういうものが甦って作られてるっていう。
ガイラ 小栗虫太郎とかね。俺もなんかね、映画撮ってないときにね、ハマッたのよ、そういう「マユツバ考古学」に。ハマりまくったなあ(笑)。
高橋 いや、「相当読んでるな」って感じがいましたんですけどね(笑)。
新谷 (考古学にハマるのは)やっぱり先祖が韃靼(ダッタン)人だったことと関係あるんですか(笑)。
小寺 室町時代まで先祖をたどってみたんですよね。
ガイラ ちがうちがう、平安時代。和同っていう年号だから700年か。700年まではルーツがわかったのよ。(※じっさいのところ和同は飛鳥時代末期)
高橋 それは「小水」っていう姓でたどっていったらそうなったんですね。
ガイラ うん。そしたら和同開称(わどうかいちん)っていうお金をこさえたテクノクラートが名字帯刀を許されて、天皇家から...従六位下安倍朝臣小水麻呂(じゅうろくいか・あべのあそんこみずまろ)っていう名字をもらったの。それまでは羊太夫(ひつじだゆう)って名前だったの。
一同 「ひつじだゆう」! 
新谷 いい名前ですねえ(笑)。
ガイラ 羊太夫さんっていうのが、その当時日本にはいなかった黒面ヒツジっていうの? 顔が黒いヒツジがいるじゃん。あれを連れて半島から渡ってきたの。で、その人がどうやら冶金とかね、火を使う技術に長けてたらしくて。朝廷には当然金貨、一般大衆には銅銭を...秩父で銅が発見されたっていうんで、それを喜んで、それの記念にって和同開称ってお金が作られたんだけど、要はそういう高い温度を作り出す技術を持ってた人らしいんだよ。だから本当か嘘かわかんないだけど「阿倍」っていうのはアイヌ語で「アペ」っていうと「火」のことなのね。だから「火を司る人」それからいわゆるお陽様とか星座の運行とかっていうのは「日置(ひき)」っていって...弓矢の一族がいるでしょう、日置弾正とか。あれはそっちのほう。暦とかそういう方は日置一族。「服部(はっとり)」はやっぱり機織りの技術とかもってきてるんだよね...やっぱほとんど渡来人だったんだな。
高橋 ははあ。
ガイラ それでけっきょくは700年まではたどり着いたんだけど、そこにあったのは、羊太夫っていうのが「胡(こ)の国から来た」としか書いてないの。で、「胡」っていうのは中国語でいうところのペルシャのことじゃん。いまのイラン。だからその先を探しに行くんならペルシャのあたりまで行かないとわかんないやな。
高橋 そうかあ、僕のなかでジンギスカンとかと勝手に記憶がごっちゃになってた...ダッタン人っていったら、そっち(モンゴル系遊牧騎馬民族)のほうだから。でも、ペルシャのほうだったんですね。
ガイラ うん、ルーツはたぶんペルシャ...うーん、ペルシャまでは行けるんだろうな。その前はどっかわかんないけど。エルサレムだったかもしれないし...。
新谷 エルドラドだったかもしれないし(笑)。
小寺 それエルが同じだけやん(笑)。


■アメニモマケズ
ガイラ うーん、(ジンギスカンといえば、もうひとつ)やりたい映画ね、(もし実現すれば)一年かかんだけどさ、宮沢賢治が主役なの。それもやっぱ「マユツバ考古学」がひっかかってんだけど(笑)。宮沢賢治がなんかどっかで農業高校の先生をやっててさ、それをやめて、自分で自作自営っていうんだっけ? 要するに自分で農場を開拓してやってたのよ。で、そこに昔の教え子で遠野って町に住んでる「風呂」って名字のやつが訪ねてくるの「賢治先生!」って。自分の親父が蔵の掃除をしてたら妙なものを見っけて、どうしてもわかんないから「先生見てくんないか?」っていわれて。で、風呂の家に行くと、そこの親父が実は風呂という名字を「源義経からもらった」っていうわけよ。源義経が北行してるときにその家に立ち寄って、風呂に入れてもらったお礼に「これからあなたのお家は風呂という名字を名乗りなさい」っていわれたんだ...っていうのを「先祖代々語り継がれてきてるんだ」っていわれて。そして、やおら古い書き付けを出してくるの。そこに後でわかるんだけど、アヒルクサ文字で書かれた文章が載ってて、宮沢賢治はわかんないから、その当時の東京帝国大学の文学部の古代史の先生たちを訪ね歩いて、写しを見せるんだけど、一笑に付されるわけ、「こんなものはなかったんだ」って。「日本には漢字以前に言葉などなかった」っていわれるわけ。それでも一生懸命調べていったら、実は源義経が頼朝に追いかけられて逃げて行く途中に金を見つけていますと。砂金とか金の粒とかね、金山とかを。それで、源義経の家名を復活させるときの軍資金としてどこどこに埋めてある、隠してあるっていう文章だったの。それで、その当時の岩手ってのは「日本のチベット」っていわれるくらい貧しい国で、要するに子殺しとか人買いとかいっぱいあったわけ。無医村で。で、宮沢賢治の家ってのはそこそこ良いお家だったんだけど、どうしても岩手県の窮状ってのを見過ごせなくて、せめて、焼け石に水かも知れないけど、その義経の埋蔵金を見つければ、すこしは岩手の農民の窮状を救えんじゃないかと思って、一生懸命調べていって、やっと最後にその隠し場所を見つけるの。で、そこに行く途中に風邪をひいてたんだけど、すごく咳込んで、疲れのあまりそこにヘタッとなっちゃうのよ。そのうち気が遠くなっていくと、こう雪が降ってきて、だんだん宮沢賢治が小高い丘のようになっていって、で、そこに「アメニモマケズ...」ってタイトルがあって(笑)。
一同 うわー「カゼニモマケズ」「ユキニモマケズ」ですか!(笑)
新谷 それをやりたいだけなんですか。我々もダジャレ映画の道を進んでるんですけど、ガイラさんに一種通じるところがありますよ(笑)。
ガイラ 途中でタイムスリップしたりして、弁慶を伴って北に北にと逃げていく、あの当時のものすごい美成年の義経がフッと視界を横切っていったりね。それと美しい盛岡の自然を一年かけて(映し出す)...泣くぞぉ(笑)。
新谷 それで最後はダジャレ(笑)。
渋谷 素晴らしい町起こしですよ(笑)。
ガイラ それで、そのときの義経が「吉野の山で別れた静御前や、私はいまもあなたを思って涙する」っていうのが〈成吉思汗(ジンギスカン)〉っていう文字なんですよ。だから義経は北海道から大陸に渡ってジンギスカンになったって説がそこから出てんの。
高橋 はあ?。
ガイラ それが要するに、第二次大戦のときに満映とかなんかが、『大東亜共栄圏』作ったりするときにものすごい武器になってんの。俺はじっさい見たことないんだけど、ウランバートルにある博物館にジンギスカンの乗った鞍っていうのが展示されてて、足をひっかける鐙(あぶみ)のとこに〈ささりんどう〉の模様が彫ってあるっていうの...〈ささりんどう〉の模様といえば、俺んちも〈ささりんどう〉なんだな。でも、俺の親父はよく飲んじゃ「俺は平家の落人(おちうど)」っていってたから、おかしな話だよな(笑)。
一同 ダハハハ。いったいどっちなんだ!(笑)
新谷 いくら聞いてもなんの実にもならんですね。オチがついたら(笑)。
高橋 えっ、ガイラさんが自分の「小水」って姓をたどっていったのは、それ自体は映画の企画とはちがうんですか?
ガイラ ちがうの、ちがうの。それは偶然、梅原猛さんの『塔』っていう本を読んでたら、〈七越古墳〉っていうタイトルの項があって、安倍朝臣小水麻呂さんが、藤原不比等と仲が良かったらしいの。で、藤原家っていうのが倒されていく過程で、藤原家と因縁のある利益享受者たちはみんな成敗しちゃえみたいな話になったときに、自分の女房とか妾とか子供を一人ずつ殺して、自分も死んだふりをして、七つのお墓を作って、死んだふりをして自分は秩父まで逃げ込んできたの。そこで頭を剃って、〈大般若経〉全六〇〇巻を写経して、それをお寺に預けてたのが、三巻だけ残ってんだけど、最近国宝になったの。その裏書きに「小水麻呂経」って書いてあんの。足利尊氏たちが戦争なんかするときに、それを火にくべたりして占ったり戦勝祈願をしたらしいの。だからいま三巻しか残ってないらしいんだけど。俺がちょうど行ったときに、埼玉県の比企(ひき)郡っていうとこに慈光寺ってお寺があって、そこに置いてあったのよ。ちょうど俺が遊びがてら訪ねていったときに、住職が寺の瓦の修理かなんかしてるときに「なんのご用?」っていわれたから「僕は小水っていいまして、お宅で預かってる書き物返してもらいにきました」っていったら、屋根から落ちそうになっちゃってさ(笑)。「いやいやいや、あれは国から預かってるものですから」って。
高橋 じゃあ、その梅原猛の本に触発されて『ルーツ』みたいな旅をしたわけですね。
ガイラ だからけっきょくは、いま世界中で64億になんなんとする人間がいるけど、父方、母方の血脈がどっかで、疫病とか戦争とかでなくなるといまの自分たちはいないわけじゃん。だから六十何億も生きてること自体はあまりいいことじゃないにしても、いま生きてる人間たちっていうのはほとんど奇跡ですよ。平安時代ぐらいまで遡るためには俺一人のために2億人くらいのご先祖が関わってるわけじゃん。俺一人のために男女がいるわけ、父母が。それのこっち側の母親父親...ってこうやって勘定していくと、俺一人のために約2億人からの人間がいることになる。
新谷 でもガイラさん、そういう計算をしていったら、いまよりも昔のほうが人口が多いってことにならないんですか。どんどん増えてっちゃって。
ガイラ ならない、ならない。だっていっぺんにいるわけじゃないもん。年代ごとだから。そりゃ、いっぺんにいたら大変だよ。


■で、アダムスキー型の円盤は...
ガイラ (『ベクター』に出てくる)〈単為生殖〉っていうアイデアはね、偶然「医学ジャーナル」読んでるときに目に入って調べたんだけど、いちばんの元っていうのは、イエス・キリストの母親よ。処女懐胎。実に簡単なんだよ、これ、論理的には。処女の生理前の、排卵前の卵子を安全のために四つ取り出して、それをアセトンとか黄体ホルモンとかの溶液に浸けて振動させるんだって、で、うまく適合すると、突然その卵子が精子なしで分裂を始めるんだよ。それで第十四週までいったやつをまた処女の子宮に戻して、妊娠促進のための黄体ホルモンとかなんかを与えていくと、子供ができるの。
高橋 ええっ、本当ですか?(笑)
ガイラ 本当なの。これは、いまの表立っては、たとえば、ホルスタインとかヒツジとかまでは実験して「うまくいってます」っていうのは情報として出てるけど、アメリカとかなんかは、もうちゃんとやってるんじゃないかと思うよ、人間まで。
新谷 じゃあ、自分のクローンができるんですか。
ガイラ うん。
高橋 それは体外受精じゃないわけですよね。精子なしだから。
ガイラ そう、単為生殖。だからミツバチなんかは、全員メスじゃない? 繁殖期のある一部だけがオスとなって、子供を産んで。あと産まれた卵のなかからランダムに一個だけ選ばれたやつにローヤリゼリーをばんばん食わせると、普通のミツバチの三千倍ぐらいの体積になるわけじゃん。そうやって子供にローヤルゼリーをどんどん飲ましてた母親がいて、それはもうものの見事にまるまると太ったかわいい赤ちゃんだったんだけど、ある日パッと見たら、からだじゅうに毛が生えてたっていう。
新谷 な、なんですかそれは? なにかダジャレでもあるのかと思ったのに。
高橋 それと、そうなんですよ、このあいだアダムスキーの話があって、なんの脈絡かわかんないけども、最終的に僕が(アーサー・C・クラークの)『幼年期の終わり』を読まなきゃダメだってことになって、それで1ヶ月くらいかかってやっと読んだんですけど...。
ガイラ あ、『幼年期の終わり』読んだ? 面白かったでしょ。
高橋 いや、それが...(笑)。
新谷 高橋さんはSFがダメだから(笑)。
高橋 そう、ダメなんですよ(笑)。
ガイラ いや、俺、あれはね、1953年かなんかに書いてるんだよね、それも見てきたようなことを書いてるからさ、「やっぱこの人はヘンだなあ」と思って。昔はね、『地球幼年期の終わり』っていうタイトルだったの。最近は『幼年期の終わり』ってタイトルらしいんだけど。
新谷 それはね、ハヤカワ文庫のが『幼年期の終わり』なんですよね。『地球幼年期の終わり』はいまだに創元社文庫から出てますよ。僕もそっちを読んだほうで。
ガイラ あ、まだ出てんの? いいよね、来た宇宙人が...いわゆる人間がいう悪魔の格好をしてるっていうのがね。
新谷 あれは、記憶が過去に遡ってたんだ、逆流してたってことですよね。未来の人間が見た悪魔の形をした宇宙人を見たショックが、過去の人間に逆にタイムスリップしていって、刷り込まれて「悪魔」っていうイメージが生まれ出たっていう。時間はまっすぐ未来に向かって流れるとは限らないっていわれてるらしいですけどね。特に小寺さんがそうでしょ? 記憶がなくなったり、さっきいたとこにもういっぺんいたり、電信柱にぶつかって倒れたり(笑)。
高橋 だから、じっさいアダムスキー型の円盤の話って、企画であったんですか?
ガイラ アダムスキー型の円盤の話?
高橋 それが念願の企画って聞いてたんで、なんで忘れてるんだろうって(笑)。
ガイラ アダムスキー型の円盤っつうのは、さっきの『グランド』っていうやつに出てくるんですよ。
高橋 ああっ?
新谷 じゃあ、小谷実可子が円盤に乗ってるわけですね。
ガイラ そうそう(笑)。
高橋 なんだ、そうか。
ガイラ それも、すっごい超ミニかタイツ姿で(笑)。
新谷 おネエちゃんは小谷実可子ひとりなんですか? 何人かいたほうがいいような気がするんですが。
ガイラ それでどうすんの?
新谷 いや、シンクロチーム作る(笑)。
一同 (爆笑)


■今度はガイラ探検隊
高橋 いま伺った話はどれもすごい面白いんですけど、マトモにやったらできないじゃないですか。
ガイラ いや、そんなことないですよ。
新谷 いくらぐらいかかりますか?
ガイラ まあ、アマゾンまで行くやつは、7億くらいあればいいんじゃない。
高橋 で、それを、たとえば「アマゾンに行ったことにして」っていうので、低予算でやるっていうのはどうですか?
ガイラ あ、俺、そういうのは好きだよ(笑)。元街いって「香港」つったって、俺、ぜんぜん平気だもん。
高橋 そういう、ものすごくムチャな話を、低予算で、工夫しながらトンチで撮ってくみたいな形で実現できないもんですかね。そのためのひとつのテストケースで、今回『ソドムの市』をやってみたんですけどね。
新谷 最初からみんな封印しちゃうでしょ、巨大な作品とか、ガイラさんがいう、例の「ムチャな企画は通らない」って。それを無理矢理やりたいってことが、まあ、我々のテーマなんですけれども。だから、ガイラさんの企画も映画に出来ないかなあって。
ガイラ うーん、素麺(そうめん)ひとつでホラーものとかやれそうじゃない。
新谷 素麺ですか?
ガイラ 素麺をね、精神寄生体として。耳とか鼻から入っていくんですよ、ヒュルッと。あと女の下半身からとか、寝てるときに(笑)。それが前頭葉に巣食ってトンでもないことやりだす。それだったらやれるな。
高橋 それはわりとシンプルな「侵略SF」みたいな感じですよね。なんかそういのありましたよね。
新谷 ロバート・ハインラインの『人形使い』とかですね。あれの映画版ってありましたよね。(※『ブレインスナッチャー?恐怖の寄生生命体』(94年))
高橋 うん、あったあった。それを、素麺でやると。
ガイラ お金がかかんないから。素麺とか木綿糸とかな。
高橋 そう、だから普通は低予算で映画を作るときって、そういうシンプルなアイデアでいくじゃないですか。だから、クローネンバーグとかも、最初のころに撮ってた映画って、こんな巨大なヒルみたいなやつが、チュルチュルって這って、お風呂のなかで女のアソコに入ったり...。
ガイラ それ、いいなあ!(笑)
高橋 あれ、なんてタイトルでしたっけ?
小寺 『シーバース』(75年)。
高橋 『シーバース』だ。それって本当にB級ホラーの王道なんですね。それはそれでやりたいなと思うんですけど、さっきの妄想歴史ものね...ガイラさんも最初「これを新谷さんが漫画に」っていってましたけど、あれをまともな映画じゃない方法で映像にしたいっていうのがあるんですよ。
ガイラ ま、「新谷君ならどう処理してくれるか?」っていうのは未知なんだけど、ちょっとビジュアルを見てみたいんですよ。脚本は出来上がってるんだから。
新谷 おお、それをぜひ読ませていただきたいですね。
ガイラ うん、じゃあ今度もってきましょう。漫画を描いてもらえればいちばんいいんだよ。
新谷 ちょっと読ませていただければ、インターネットで連載するってのもできますし。
高橋 いいですね、いまは新谷さんところにもパソコンが入ったんで、紙芝居アニメみたいなものとか、影絵アニメみたいなものを考えてるんですよね。
新谷 そうですね。そういうことも「できる、できない」がわかりますしね。
高橋 あと今度試そうとしてるのは「ゲキメーション」っていって、(楳図かずおの)『妖怪伝・猫目小僧』でやってた、切り絵でひょいひょいと動いてるだけとか...あと背景もぜんぶ絵ですよね。それで小谷実可子の、昔のいちばんいいときの写真を切り抜きにして、こう動かすと(笑)。
新谷 小谷実可子に許可を得ないといけないですよね。
高橋 まあ、そうですよねえ。
新谷 鼻は栓をつけたままなんですよね(笑)。お化粧して、髪の毛、上でひっつめして...あっ、じゃあ、古代人はみんな同じ髪型して、みんな水着着てるってことにしよう。
ガイラ あの...資料はもってるけど、アマゾンの奥地でね、十年ぐらい前に発見された新しい部族がいて...裸族なんだけど、その人たちが使ってる言葉が「イアテ」っていう...イアテ語っていう言語を使ってて、そこの裸族っていうのは、生まれた子供の名前に必ず最後に「こ」がつく。そいで強引にくっつけたんだけど、実は「岩手」なんだよ、あれ。岩手のほうっていうのは、かわいいものとか動物とかに必ず「こ」がつくじゃん。「べこっこ」「馬っこ」って。
新谷 じゃあ「ズーズー弁」なんですかね。
ガイラ アマゾンで(笑)。だから当然蒙古斑はあるんだろうな。つまり、モンゴロイド...うん、そう、モンゴロイドなんだ、俺ら。
高橋 ふははは(笑)。
新谷 いまのタイトルにいいんじゃないですか『俺らモンゴロイド』って(笑)。
ガイラ でもちゃんと聖書に出てきてるから、モンゴロイドって。俺らはいちおう、本当かどうかはわかんないけど、学説的には...なんだったっけ、何系モンゴロイドだったけ? あ、セム! セム、ハム、ヤペテっていたじゃん? そのうちのセムの一族の血を引くモンゴロイドだっていわれてんだって、ほんとか嘘か。
高橋 それって、「日ユ(日本=ユダヤ)同祖論」とかに関わってくるんですか?
ガイラ 関わってくるんだよ、実は。で、いまの天皇家っていうのが、忽然と...ソロモンのあとにイスラエルとユダの国に分かれて、両方ともアッシリアに攻め落とされる直前に、(ユダヤの)十二部族のうちの十一部族が消えてんのよ。そいつらがずっと来て、日本にまで来たんじゃないかって、その末裔が天皇家だってことを頑強にいう人もいるのよ。
高橋 (日本の)どこでしたっけ? ダビデの紋章みたいなのがあるのは。
ガイラ 伊勢神宮。伊勢神宮の灯籠にぜんぶ彫ってある、ダビデの星が。つまり六芒星(ろくぼうせい)。
高橋 青森あたりにもありましたよね。
ガイラ うん、戸来村(へらいむら)。ヘブライだっていうんで。
高橋 あ、そうそう。
新谷 ガイラさん、学研の本なんかをよく読んでるんでしょうねえ(笑)。
小寺 でも山の名前とか谷の名前とかって、たしかに向こうから流れてきた名前らしきものがたくさんありますよね。
ガイラ うん。「つるとかめがすべって、うしろのしょうめんだあれ」っていうのは、よくわかんない唄なんだけど、あのう、弘法さんが開いた四国のお遍路さんがあるじゃん? で、どっからも行けない「つるぎやま」って山があるんだけど、いまは「剣山」って書くんだけど、昔は「鶴亀山」って書いてたっていう。そこには「ソロモン王の財宝がある」って小説にした人が二人いる。
高橋 ソロモン王の財宝ですか(笑)。
新谷 探検隊作ったほうがいいかもしれないですね(笑)。
ガイラ じゃあ今度「ガイラ探検隊」作ろうか(笑)。
高橋 いいですねえ?。
ガイラ で、どこいくの? 今度(笑)。
小寺 じゃ、足立区(笑)。
新谷 足立区にソロモンの財宝ですか。いやあ「ガイラ探検隊」はいいんじゃないですか。
小寺 そういえば、ヒトラーの死んだときの話もありましたよね。
ガイラ ああ、だからヒトラーがエヴァ・ブラウンといっしょに死んでた場所の横の大広間に、背広姿の明らかに東洋人が手をつないで六人、毒飲んで死んでたのよ。
高橋 ほう。
ガイラ 最初にそれを発見したのはソビエトの兵隊だったんだけど、ソビエトっていうのは強引にいろんな国を吸収してたから、アジア系の顔は見なれてるから、そんなに違和感を感じなかったと。二日遅れてアメリカの情報将校が入ってそれを本国に打電したら「調べろ」っていわれて、調べたら、相当位の高いラマ僧たちだったっていうんだよ。で、「なにしてたんだろう?」っていったら、やっぱり念力でものを飛ばす実験をするつもりだったんじゃないかって。あそこ、石油なんか採れない国だから。やってたんだよ、きっとな。あのヒトラーってのも妙なやつで、地下帝国だのなんだの大好きじゃん。(セオドア・)ルーズベルトもそうなんだよね。アラスカのオイルの染み込んだ砂なんか発見してるし。それでボリビアに行ったときは、ボリビアの山の途中に地下帝国の入口を見つけてんだよ、ルーズベルトさんは。
高橋 はあ、これが『ソドムの市』のサイトに載ったら、かなりマニアックな人の注目を集めてしまいそうですね...ま、それはそれでいいんですけど(笑)。大変なことになってしまいますね。オカルトの話ばっかりで。
ガイラ あ、でもオカルトの発祥の地は日本なのよ。
高橋 えっ、そうなんですか?
ガイラ ああ、「お軽と寛平」っつって。
高橋 い...いや、いいお話を聞かせていただきました(笑)。

2004年10月17日 コズミックダイニング・ガイラにて
構成:しまだゆきやす(イメージリングス)

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